2050年日本社会構想の基軸設計理念「シン安保2050」の意味と究極の使命

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本記事は、前編にあたる以下の記事
⇒ サイトONOLOGUE2050、設計理念シリーズ序章|2050年の望ましい日本社会実現へ – ONOLOGUE2050
で提示した5つの設計理念を踏まえ、その具体的な構想第一弾として「シン安保2050」構想を提起するものです。

2025年、私たちは歴史的に一つの象徴的な分岐点に立っています。
予想をはるかに超えた外交の変化、長期化し、先が未だ見通せないウクライナ・ロシア戦争。
そして頻繁に起きる自然大災害、経済不安、特殊詐欺やフェーク情報の拡大。
そして加速する人口減少と少子高齢化という多重の課題を抱えながら、社会の根幹にある「安全」と「保障」のあり方そのものが再定義を迫られています。これまでの「安保」概念は、軍事・防衛に偏重しすぎていたのではないでしょうか。

こうした現実をふまえ、本記事では新たな思考の枠組みとしての「シン安保」――すなわち、「安全(安)」と「保障(保)」、それを支える「補助(補)」の三位一体の新しい概念を提示します。

この構想は、単なる政策論にとどまらず、私たち一人ひとりが、生活・地域・国の未来像を構想する際の指針ともなるものです。
本稿ではその背景・定義・理念・構造・政策課題・世代別ビジョンに至るまで、横断的かつ極力現実を踏まえて提案していきます。


1-1 従来の安保=安全保障

戦後日本において「安保」とは、多くの場合「安全保障(national security)」を意味しました。国家の独立と国民の生命・財産を外敵から守るという観点に限定されてきたといえます。
日米安保体制の下、軍事力の抑止力、同盟関係による後ろ盾、外交努力による安定的国際環境の確保がその主軸でした。

しかしこの従来の安全保障概念は、「国家」や「領土」といったマクロな単位を前提としており、個々の市民の生活不安や地域社会的リスク等には十分対応しきれていません。
テロ、自然災害、感染症拡大、情報戦・サイバー攻撃など、近年のリスクは物理的脅威にとどまらず、より日常生活や社会制度の根幹としての安全に直結するようになっています。

このような背景のもと、「安全保障=軍事的対応」という旧来の枠組みを超えた、新しい概念の拡大・設定とその必要性を考えるべき状況にあると考えています。

1-2 完全ではありえない「保障」「保証」、重層的に必要な多様な「保」と「補」

「保障」や「保証」は、文字通り「ある状態が必ず守られること」を意味します。
しかし、現実には完全な保障や保証は存在しません。
たとえば、年金制度が破綻しないという保証、災害が起きないという保障、失業しないという保証、失業した時の完全な保障・・・。
いずれも実現不可能であり、それゆえに人々は「不安」を抱きます。

現在問題になっているトランプ大統領による関税政策やディール外交などを見れば、その理由ははっきりしています。
これまでの条約や契約や法律が、まったく機能せず、これにより受ける被害に対して、トランプは何の責任も負わない。
ロシアのウクライナ侵攻も同じです。
平和や安全に対する保障も、保証もないわけです。

そのような状況で求められるのが、「保」や「補」といった概念の重層的適用です。
以下の考えや備えが必要であることは、簡単にイメージできると思います。
「保有」「保持」:必要な資源やスキル、制度を持ち続けること。
「保護」「保全」:社会的弱者や自然環境をリスクから守る仕組み。
「補完」「補償」:制度が及ばない部分や制度の不備を補い、損失や被害に対応する仕組み。

つまり、「完全な保証・保障が不可能」な時代においては、リスクを多層的・分散的にカバーする仕組み、すなわち「補い合い、保ち合う社会構造」と制度が必須となるのです。
頻繁に眼にし、耳にする「不確実性」への対応のためにも、です。

1-3 安全にとどまらない、市民・国民の日常生活と将来への希求|不安感、不安定という壁

現代の日本では、多くの人が「漠然とした不安」を抱えています。
いえ、はっきりと「不安」を抱いている方々も多いことでしょう。
それは「生命が脅かされる」という直接的な危機ではなく、「老後の生活が不安」「子育てに未来が見えない」「結婚したくてもできない」「制度がいつ変わるか分からない」。こうした制度的・社会的・心理的な不安定さに起因してのことです。

特に次のような生活領域において、従来の安保では十分に対応できていません。
雇用と所得の安定:非正規雇用による低収入や失業リスクの増大に対する安保は?
医療・介護の持続性:高齢化に伴う制度の逼迫とサービスの地域格差。財政面での財政破綻問題や現役世代・次世代の負担増の不安へは?
教育と子育て:経済的負担や子育てと仕事の両立問題への支援制度の不整備の状況に対しては?
居住と地域インフラ:空き家問題や過疎化。地方自治体の自然災害への脆弱性・財政負担の圧迫への対策は?

これらは、軍事的・外交的対応では解決できないことは明らかです。
日常生活そのものの「不安定性」を取り除く視点、すなわち、「生活保障としての安保」「社会の維持・回復のための安保」への転換と拡充が求められているのです。

1-4 「シン」概念の必要性とその定義

これまで見てきたように、従来の「安全保障」は、主に外的脅威や軍事的リスクに対する備えとして制度設計され、問題とされてきました。
しかし現代社会においては、災害、パンデミック、気候変動、インフレ、格差社会、少子高齢化など、より複雑で多元的なリスクが日常生活の中に浸透しています。
そのような状況下では、単なる「保障」や「保証」の延長では対応しきれない「不安」そして「不確実性」が広がっています。

このような現実に対し、既存の制度や概念を再定義し、統合的かつ横断的な視点から新たに構築し直す必要があります。
そのために導入されるのが「シン」という接頭辞が持つ概念です。

「シン」は、「新しい(新)」「真の(真)」「進化した(進)」「深化した(深)」という複数の意味を併せ持ちます。
「シン安保」における「シン」とは、これまでの限定的・分断的な『安保』概念を乗り越え、以下のような視座を打ち出すものです:

1)新しい視点(New Vision):国家の安全だけでなく、人間の尊厳と生活の安心を包含する枠組みへ。
2)真の目的(True Purpose):社会的弱者・次世代・地方などの周縁的存在に光を当てる包摂的理念。
3)進化した構造(Evolved Structure):リスクの重層性に応じて多次元的・補完的に制度を設計。
4)深化した理解(Deepened Ethics):数値化できない「不安」や「心の安全」にも対応する文化的・心理的側面の重視。

このように「シン」という枠組みを取り入れることによって、「安」や「保」、そして「補」に新たな意味が加わり、制度設計の基盤が広がります。
そして「シン安保2050」は、2050年の望ましい日本社会を創造・実現するための「シン安保」の在り方を、他の設計理念との統合と共に考え、構築していくものです。
次節では、この「シン安保2050」がどのように定義され、具体的な構成要素として何が求められるのかを詳述していきます。

前節を受けて、第2節では、「安」と「保」「補」を具体的に掘り下げ、確認していきます。

2-1 「安」が持つ多様な概念と必要性

「安」には、安全・安心・安定といった多様な意味が込められています。それぞれが現代社会の基盤を支える不可欠な要素です。
それぞれの意味と意義を整理しました。

1)安全(Safety)

事故・災害・暴力などの外的脅威からの保護が主な対象領域であり課題になります。
物理的なリスクを最小化し、人々が恐怖や不安なく生活できる状態を示すとともにめざします。
例えば、防災インフラの整備、犯罪抑止策などですね。

2)安心(Peace of Mind)

制度的・心理的な信頼感をもたらすものです。
例えば、医療制度や年金制度が持続するという確信が「安心」につながります。
制度の透明性や持続可能性などがここでは大きく寄与します。

3)安定(Stability)

経済・雇用・生活環境の持続的な均衡状態を意味します。
例えば、雇用の安定や所得の安定は、生活設計の見通しに直結し、精神的安定にも寄与します。
政情の安定や信頼できる政治体制や政策の安定も重要です。

これら「安」の多面性を理解し、相互に補強し合うことが、これからの近未来社会の信頼と持続可能性を支える鍵となります。

2-2「保」が持つ多様な概念と関係性と問題解決課題の具体化

「保」は、保有・保持・保護・保全・保善・保障・保証と多様な意味と文脈で使われます。
そして、資源、環境、情報、制度など多層的な対象に関わります。それぞれの概念を、前項に倣って整理しました。

1)保有(Possession)

社会や個人が必要な資源や権利、情報、能力を保持し続けている状態です。
例えば、国家がエネルギー源や社会的インフラやデータ基盤等を保有し、供給の安定や主権の確保を図る、という政策がイメージできます。

2)保持(Maintenance)

制度や文化、技術などを持続可能な形で維持し継承する行為を意味します。
例えば、地域の医療ネットワークを保持し、平時・有事を問わず信頼できるサービスを提供する、といった安心システムが象徴的です。

3)保護(Protection)

リスクや脅威・恐れから対象を守る行為といえます。
例えば、子どもや高齢者、障害者の生命や生活を守る。あるいは自然環境や文化財など社会的に受動的な性質を持つ存在の保護などをイメージできますね。

4)保全(Preservation)

自然や社会資本の健全性を長期的に維持する取り組みを意味します。
例えば、森林や河川など生態系の保全、インフラの維持管理などがそれに当たります。

5)保善(Conservation & Improvement)

単なる維持ではなく、資源や制度の質を高めながら守る動的な概念です。
例えば、:伝統技術を守りつつ現代的に活用し、地域振興につなげる保善的発想。

6)保障(Security)

個人・市民・国民の権利や生活基盤が制度的に安定して提供されることなどを意味します。
例えば、医療・介護・教育・雇用などへのアクセスを社会全体として保障する枠組みが代表的です。

7)保証(Guarantee)

制度や契約、政策が所定の義務や責任を確実に果たすことを前提とする担保的仕組みなどを意味します。
例えば、公的年金制度における将来給付の保証、災害時の政府支援金の保証などが課題として存在します。

このように、「保」の各概念は相互に重なり合いながら、社会における不安の抑制と安定の維持、不確実性への対応に機能します。
「シン安保2050」では、これらの多層的「保」の構造を設計思想として明示的に統合し、分野横断的に展開していくことを課題としています。

2-3 「安」と「保」を補う「補」の必要性と概念及び「安保」との関係

どんなに優れた制度や枠組みも、不測の事態や構造変化に完全に対応することは不可能です。
そのため、そこで「補」の概念が常に必要となります。
「補」として、次の機能も想定し、備えておくことになります。

1)補完(Complement)

複数制度間の役割補助や代替性を確保する機能です。
例えば、失業保険と生活保護の制度的接続、民間保険と公的保険の共存設計などがあります。
初めからどんな場合にも対応できる制度、考えられた制度は皆無に等しいかもしれません。
そこで、弥縫策として、個別の例外対応や一時的な措置が補完措置として取られることがあります。しかし、必ずある面で矛盾を露呈し、制度として機能しなくなるケースも多いことはこれまでも多く経験しています。
もちろん、端からこうした補完的な措置が準備されていない制度がまだまだ多数あり、ここでの課題となります。

2)補償(Compensation

損失・被害・不利益への救済措置などがあります。
例えば、災害時の公的補償制度、ワクチン接種の健康被害補償制度などがありますね。
しかし、よくこうした補償が受けられない例が問題になり、時には訴訟問題になるケースも。
補正予算や予備費の充当で済ますことは、一時的には一つの方法となりえます。しかし、制度的に整備しておくべき課題が多々あることもこれまでの経験から明らかです。

3)補助(Assistance/Subsidy)

経済的・制度的に困難を抱える個人や団体に対して行う金銭的・人的・技術的支援がよく話題になっています。
例えば、低所得層への家賃補助、ひとり親家庭への子育て・教育支援補助金、被災世帯への資金補助、地域経済活性化のための中小企業補助制度など多様にあります。
しかし、補償と同様、対象基準・線引きや運用面などで問題が多発しています。

このように、「補」の視点も、「安」や「保」がカバーしきれない領域を救済・支援し、全体の制度の持続性・包摂性を担保する重要な要素です。
これらの「補」は、制度間や世代間の断絶を埋め、社会の多様性と変動性に適応する柔軟性を提供する手段でもあります。

2-4 「シン安保2050」の定義と使命

以上を踏まえ、「シン安保2050」は以下のように定義できます:

「シン安保2050」とは、
安全・安心・安定を土台に、保護・保全・保障などの多様な「保」の制度を多層的に整備する。
そこに補完・補償等の「補」の機能を組み込む。
これにより、全世代・全市民、そして多様な社会が、尊厳を保ち希望を持って暮らし、諸活動を進めていくことができる。
こうした共生社会を構築する、近未来志向の設計理念である。

その使命は、従来の軍事・外交中心の安保を超えて、人間の生活全体を包摂する「生活保障としての安全保障」へと転換することにあります。
個別のリスクへの対応を超え、制度横断的・価値統合的な新たな社会基盤の構築が今、求められています。

なお、この設計理念グループを基盤とした社会構想に基づく社会形成・実現のための方策・政策を具体的に考察・提言していくのが、シリーズ後の主課題となります。

2-5 個人個人の課題として取り上げるWEBサイトネットワーク

また、その対象は公的な制度やシステムの関わるものが大半です。
それらを享受する、あるいは関連して生活をおくる個人個人の在り方については、他の関連する以下の複数のWEBサイトネットワークでの課題としています。

・LIFE STAGE NAVI :https://laifestagenavi.com
・結婚家族.com :https://kekkonkazoku.com
・介護終活.com :https://kaigoshukatsu.com
・副業起業.com :https://fukugyokigyo.com
・ベーシックペンション:https://basicpension.jp
・Lifestyle gallery :https://pesonal-lifestage.site

なお、ベーシックペンションを除いて、すべて新しく開設して間もないか、リスタートしたばかり。
記事数などはまだ少ないことをご理解ください。
今後当サイトと重ね合わせて、あるいは関連させて参考にして頂ければと思います。

「シン安保2050」は、単独で機能する理念ではなく、2050年の社会構想において他の4つの理念と密接に連動し、相互に補完・強化し合う設計思想の中核を担います。

3-1 5つの設計理念の確認

本シリーズで掲げる5つの設計理念は以下の5つです。

1)シン安保2050
2)社会的共通資本2050
3)シンMMT2050
4)循環型社会2050
5)技術革新2050

    これらは個別の分野を代表するだけでなく、複雑化・流動化する社会課題に対して横断的に対応するための骨格を形成しています。
    以下に、それぞれの「シン安保2050」との関係性について概要をメモしました。

    3-2 「社会的共通資本2050」との関係

    「社会的共通資本」は、医療・教育・インフラ・環境など、市民生活を支える基盤資源の集合体です。

    ・「シン安保」が目指す安心社会は、この共通資本が制度的・空間的に適正に保全されてこそ成立します。
    ・現在、私有化や市場原理の浸透により公共性が弱体化し、安定的提供が危ぶまれています。
    ・これに対し、「保護」や「補完」の視点を導入し、公共インフラの戦略的再設計が不可欠です。

    但し、次回の第2章のテーマであるこの「社会的共通資本2050」は、先行して公開した以下の記事を一歩進めて(進化・深化)させて描きたいと考えています。
    2050年を想定しているからです。

    3-3 「シンMMT2050」との関係

    「シンMMT2050」は、現代貨幣理論をベースに、持続可能な財政と社会的投資の新しい関係性を構築する理念です。

    ・安心・安定の社会を実現するには、将来不安の源となる「財源神話」から脱却する必要があります。
    ・財政赤字の活用を通じて、医療・教育・福祉への積極投資を行い、「保障」や「補償」を実現可能にするという視点は「シン安保」と一致します。
    ・「貨幣は信用」であるという原理が、「心理的安心」にも制度的裏付けを与える点で、両者は本質的に連携しています。

    この設計理念は、第3章のテーマです。
    但し、従来のMMT(現代貨幣理論)を単純に用いるものではありません。MMTに対する批判論やその壁・罠について焦点を当てることで、なんとか新しい概念・観念、見方・考え方を提示できればと考えています。
    理由はもちろん、2050年に実体として具現化することを想定しているためです。

    3-4 「循環型社会2050」との関係

    「循環型社会2050」は、資源・エネルギー・経済・人材の流れを一方向から循環へと再構成する社会モデルです。

    ・「シン安保」が掲げる「安定」や「保全」は、地球環境や資源循環が前提条件として成立します。
    ・たとえば食料安保、エネルギー安保は資源の持続的管理と密接不可分であり、「安」の達成は「循環」なくして不可能です。
    ・ゴミ・エネルギー・人間関係といったあらゆる「断絶」を再び結ぶ「補完」的思考が、「シン安保」にも内包されます。

    この設計理念は、第4章のテーマです。
    少し先取りしますが、循環型社会の軸としているのが「自給自足社会化」です。
    また、その循環型社会創造の先には、「シン・グローバリズム2050」を想定していることも、お伝えしておきたいと思います。

    3-5 「技術革新2050」との関係

    「技術革新2050」は、単なるイノベーション推進を超え、技術を社会の安定と共生にどう活かすかという価値観の変革を目指します。

    ・技術は「保」の強化手段であると同時に、「リスク(不安)」の源ともなり得ます。
    ・AI・ロボット・バイオなどの技術は介護・医療・安全保障などの分野において「安心」を高める可能性を持ちますが、倫理的規範や制度的「補償」が伴わなければ逆に不安定要因になります。
    ・「シン安保」はこうした技術の社会実装において、倫理・制度・人材育成の三位一体による「安定基盤」の構築を重視します。

    「技術革新2050」は、第5章、シリーズ最後の設計理念です。
    専門外の領域なので、特にChat GPTの手?を借りて記事化することになりそうです。

    3-6 「シン安保2050」の位置づけと役割

    以上のように、「シン安保2050」は他の設計理念すべてと連動し、交差点としての役割を果たします。

    ・それは、「制度・経済・資源・技術」など分野別に分断された構想に対して、「人間の生活と不安」という統合軸を与えるものです。
    ・「不安に向き合う力」と「安心を再設計する制度力」として、「シン安保2050」は理念の中心に置くものです。
    すべての設計思想を下支えする中核理念であることを繰り返してお伝えしておきたいと思います。

    この節では、Onologue2050の主要カテゴリーにおいて「安」「保」「補」の理念をどう具体化し得るか、現実の政策課題や社会問題と結びつけて具体例として展開します。

    4-1 Resources(エネルギー、公共インフラ、国土・土地、希少資源、自然環境、食料他)

    1)エネルギーの安定供給(安定 × 保全):再生可能エネルギーの導入が進む中で、エネルギーの安定供給は重要課題です。自然災害に備えた分散型インフラの整備も必要です。
    2)水資源の保全と補償(保全 × 補償):地下水の枯渇や水質悪化による被害への補償制度の強化が求められています。
    3)国土の安全管理(安全 × 保護):豪雨・地震・土砂災害など、国土の災害リスクに対してハード・ソフト両面から保護策を強化すべきです。
    4)農地と食料の保障(保障 × 安心):食料自給率の低下は国民の不安要因です。農業支援と安定供給体制の整備が必要です。

    4-2 Politics(安全保障、政治・行政、立法・司法・憲法、財政・財源・税制他)

    1)政治制度の信頼確保(安心 × 補完):政治不信が広がる中で、市民参加型制度の整備が求められています。
    2)災害対応の立法補完(補完 × 安全):気候変動に伴う想定外の災害に柔軟対応できる緊急立法制度の構築が急務です。
    3)財政赤字と社会保障のバランス(保全 × 補償):税収不足による社会保障制度の劣化への備えとして、持続可能な財政運営と適正な補償制度の設計が必要です。
    4)憲法と人権保障(保障 × 安全):表現の自由やプライバシーと、安全保障政策の両立が問われています。

    4-3 Economy(労働・雇用、国内経済、地域経済・公共経済、産業経済、社会経済、経営・マネジメント、経済安保、貿易、金融・資本他)

    1)雇用の安定と生活保障(安定 × 保障):非正規雇用の増加に伴う不安定な生活に対し、最低限の所得保障や再雇用支援策が必要です。
    2)中小企業の経営補完(補完 × 保持):地域経済の要である中小企業の事業承継・倒産回避を支える制度的補完が求められます。
    3)デジタル資本の保全(保全 × 安全):サイバー攻撃から企業情報を守るため、サイバーセキュリティと技術保護政策の両立が必要です。
    4)エッセンシャルワーカーの保障(保障 × 保護):コロナ禍で重要性が明らかになった基幹労働者への待遇改善と制度的保障の整備。

    4-4 Social System(社会保障、医療・介護制度、保育・教育制度、地域・地方・都市)

    1)医療供給体制の地域格差解消(保障 × 補完):都市部と地方で異なる医療水準を是正するための制度的補完が必要です。
    2)介護人材確保とケアの質の安定(安定 × 保護):介護人材の待遇改善と教育制度の強化により、質の高いケア体制を維持します。
    3)教育機会の均等化(保障 × 安心):家庭環境によらない教育機会を保障するための奨学金や無償教育制度の充実。
    4)地方自治体の災害補償体制(補償 × 安全):災害被災地への財政的支援と復興制度の見直しが求められます。

    4-5 Social Issue(少子化社会、高齢化社会、格差社会、ジェンダー、事件・犯罪他)

    1)少子化と安心な子育て環境(安心 × 保護):保育施設不足や教育負担の軽減策により、安心して子を産み育てられる社会づくりが急務です。
    2)高齢単身者の生活補償(補償 × 保障):高齢者の単身・無年金状態に対する最低限の生活補償制度の構築。
    3)貧困層の支援と格差是正(補完 × 安定):食料・住居・医療といった生活基盤の提供と安定的支援の構築。
    4)ジェンダー平等の保障(保障 × 保護):差別撤廃と法制度による女性・LGBTQへの権利保障。

    4-6 Global Society(国際問題、国際関係、国際経済、地政他)

    1)難民受け入れの補償制度(補償 × 保護):国際的な人道支援としての受け入れ体制と受け入れ先自治体の支援制度が必要です。2)パンデミック時の国際的協調体制(補完 × 安全):ワクチン供給、情報共有など国際的安全保障の補完システムが鍵となります。
    3)サプライチェーンの保全と経済安全保障(保全 × 安定):半導体・レアアースなど重要物資の調達ルートの多様化と戦略的備蓄が求められます。
    4)気候変動と国際保障(保障 × 安心):気候変動による移民・災害への国際的補償・支援枠組みの確立が重要です。

    これらは、あくまでも例です。
    実際には、無数にこうした課題や組み合わせが存在する。こう言っても決して大げさではないと考えています。
    そして、ここで示したレベルや性質の多種多様な現実的課題とこれからの想定される、あるいは想定すべき諸課題。
    それらが、これから当サイトで取り組む課題の一つ一つになっていきます。

    本節では、「シン安保2050」の理念を、世代ごとの時間軸に応じて、どのように社会に形成し、その実現に向けた行動を提案するかをイメージしてみます。
    特に、2030年、2040年、2050年という時間区分ごとに、各世代に対して、望ましい社会や生活のあり方を想像し、そこに「シン安保」の考え方をどう活かして頂きたいかを提案します。

    5-1 現役世代(2030年を視野に)へのメッセージ

    現在働き盛りにある現役世代は、2030年を迎える頃には社会の中心的な担い手として、生活と制度の両面に深く関与している方々です。
    この世代の皆さんには、ご自身と家族の生活の安定を築くだけでなく、社会全体の安心の基盤についても大きな関心を持って頂きたいと考えています。
    例えば、以下のような視点、感覚でイメージしてみてはいかがでしょうか。
    ・2030年の日本社会像を描く:多様な働き方が可能で、子育て・教育・介護などライフイベントとの両立が可能な社会に、とか。
    ・生活の想定:自身の仕事人生や働き方を安定させ、家族との関係性をより良好に。そして将来に希望が持てる暮らしにするためには・・・、とか。
    ・「シン安保」の視点:生活保障、雇用の安定、育児・教育支援の制度設計に参加・関心を持ち、共創型社会づくりに少しでも貢献できないか考えてみる、とか。

    5-2 次世代(2040年を視野に)へのメッセージ

    現在10代〜20代の若い世代が2040年、すなわち15年後には?
    多くが現役世代として中堅世代を迎える頃までには、社会の価値観や制度の根幹は、相当変化・変革しているのではないでしょうか。前項の先行した現役世代に拠るところも大きいでしょう。
    しかし、その時期に至るまでに、現在次世代にある方々も当事者としての創造力と実践が大きな影響を与えます。そして変化・変革自体に直接影響を与えたり、貢献していることも多々あるでしょう。

    この世代には、変化を当然のこととし、「シン安保2050」と関係する4つの設計理念を是非理解して頂きたいと思います。
    その上で、実際の課題への取り組みと多様な社会的な活動に結びつけてくださることを、勝手に期待しています。
    新たな個々人の関係性や社会との関係性の構築にも、5つの設計理念が役に立つことを!

    次世代は次世代なりに、同じ視点・観点でイメージしてみるとどうでしょうか。
    ・2040年の日本社会像を描く:多文化共生、ジェンダー平等、環境との調和が実現された成熟社会。
    ・生活の想定:多様な働き方や生き方が尊重され、都市・地方を問わず安定した暮らしが選択できること。
    ・「シン安保」の視点:教育・技術・倫理の統合を通じて、持続可能で包摂的な社会設計に貢献する役割を担うこと。

    5-3 団塊・高齢世代(2050年を視野に)へのメッセージ

    2050年には、現在の団塊世代は人生の終盤を迎えるか、既に次の世代に継承しているか。
    多くが社会の「見守り手」役を全うした時期にあたるでしょう。
    私たちそして彼らは、経験や知見、価値観を次世代へ伝え、制度や仕組みの持続性を支える世代としての役割を果たして、人生を終えることができるか。

    ここでも、高齢世代として、後継世代と同様に、以下の視点で残りの人生と関連させてイメージしてみてはどうでしょう。
    ・2050年の日本社会像を描く:世代間の共助・協働が制度化され、高齢者も安心して暮らせる地域共生社会が形成されているか。自分自身がその中で何らかの貢献ができるかどうか、と。
    ・生活の想定:最期まで住み慣れた地域で、自立と支援のバランスを保ちつつ生きることができるか、そのために今から何をどうすべきか、とか。
    ・「シン安保」の視点:自身の終活や看取りも含め、安心して老いるための制度整備に貢献する。そうしたことで、次の世代も、高齢者としての不安やリスクを軽減できることになれば。「シン安保」を理解するための経験や知恵は、他世代よりも多く持っているはずだから、と。

    このように、短期(2030年)、中期(2040年)、長期(2050年)それぞれの時間軸で世代ごとの役割と希望を保持し、それらを望ましい形で活かしていく。
    「シン安保2050」の実現を現実の社会設計・社会構築へと連携していく鍵。これをそれぞれの世代が持っていると思うのです。

    将来の不安や不確実性を乗り越える、あるいは適切に対応できるようにする。
    そのためには、ただ現状の制度に依存するのではなく、あるいは無関心を決めこむのでもない。
    一人ひとりが、新たな「シン安保」、従来不足していた「安心・安全・安心」をつくる主体として行動し、必要があれば参画していく。
    それこそが、「シン安保2050」を提唱・提案する目的であり、めざす社会の基盤インフラとして位置付けるゆえんなのです。

    本記事を通じて提示してきた「シン安保2050」構想は、既存の「安保」概念を根本から問い直し、制度や分野を超えて「安・保・補」を統合的に捉える試みでした。

    現実社会に存在する複合的な課題に対し、複数の5つの視点で補完し合う設計理念と、生活・地域・国レベルで共有可能な目標設定を通じて、現実として、そして近未来に向けた政策思考の土台を築くことができると考えています。

    求められているのは、誰かが与える「正解」ではなく、私たち一人ひとりが「どんな社会を望むか」を問い、その実現に向けて考え、想像し、創造に結びつけることです。

    2030年、2040年、そして2050年。
    それぞれの世代が自身の生き方を重ねながら、「シン安保」を軸とした持続可能で共感可能な社会ビジョンを描いていけることを願っています。

    なお、次回の記事では「第2章 社会的共通資本2050」と題し、社会の土台としての「社会的共通資本」の再設計に取り組みます。
    既に先に、「社会的共通資本」について、以下の記事を投稿していますが、その進化・改訂バージョンにと考えています。
    ⇒ 社会的共通資本とは何か|宇沢弘文の思想と「もうひとつの資本主義」 – ONOLOGUE2050

    シリーズ序章に戻ります。
    ⇒ サイトONOLOGUE2050、設計理念シリーズ序章|2050年の望ましい日本社会実現へ – ONOLOGUE2050


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