苦境の介護保険制度、脱却可能か?|日経<経済教室>から考える
深刻な危機に直面しているとされる介護保険制度。
2年に一度、その制度改定が行われているが、次回は2027年度。
昨年2025年12月開催の、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の介護保険部会。
そこでの意見書をベースに、3人の専門家が、「苦境の介護保険制度」というテーマで、日経【経済教室】で、以下のようにそれぞれの識見・提案を論述しています。
*記事リンクを貼っていますが、有料会員のみアクセス可能です。ご了承ください。
1.(経済教室)苦境の介護保険制度(上) ケアマネジャーを司令塔に 飯塚敏晃・東京大学教授 – 日本経済新聞 (2026/1/30)
2.(経済教室)苦境の介護保険制度(中) 公費負担6割に引き上げを 結城康博・淑徳大学教授 – 日本経済新聞 (2026/1/31)
3.(経済教室)苦境の介護保険制度(下) 給付・負担の見直しを粛々と 高野龍昭・東洋大学教授 – 日本経済新聞 (2026/2/2)
本稿では、この3論述を取り上げて、考察します。
はじめに
私が介護に関心を持ち、向き合うことになったのが、2015年。
同居していた義母(当時92歳)が、骨折して手術・入院。
退院後は、自宅で介護することが困難と判断し、施設入所を選択。
その準備を始めた段階から介護制度と介護保険制度との付き合いが始まりました。
はじめに利用したのがサ高住(サービス付き高齢者住宅)で当初は、要介護1。
その後、要介護3になった段階で、特養(特別養護老人ホーム)に転所。
そして、同所で100歳で逝去。
その折りの体験を、関連サイト LIFE STAGE NAVI に以下の3つの記事に集約しています。
*93歳義母「サ高住」介護体験記|2015年の記録と気づき – Life Stage Navi
*98歳義母「特養」介護体験記|コロナ禍における施設介護生活の記録 – Life Stage Navi
*100歳義母 看取りと見送りの記録|終活を実践した家族の体験(2022年7月〜10月) – Life Stage Navi
当初、介護相談.com(廃止) 次に介護終活.com(運営後サーバー変更に伴い一時廃止し、再度開設) という介護専門のWEBサイトで介護保険制度を含む介護に関する情報や体験、考察等を投稿してきました。
昨年からは、自身の終活の一環として、LIFE STAGE NAVI というサイトに、介護終活.com の主な記事の移行を進めてきています。
しかし、本稿は、当サイト ONOLOGUE2050での投稿です。
これは、社会保障、行政・法そしてその政治的課題は、当サイトで取りあげる方針によるものです。
以上の体験や経緯も踏まえながらの3論述考察になります。

2025年12月介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見書」からの3研究者の小論を考える
この章では、3人の論述を順に取り上げ、生成AI,Geminiに要請し提出された要約を転載。
その後、私の意見を提示していきます。
1.ケアマネジャーを司令塔|飯塚敏晃東京大学教授、論述から
*いいづか・としあき氏: 1964年生。カリフォルニア大ロサンゼルス校博士。専門は医療経済学・産業組織論
飯塚教授論述の要点
【現状:出来高払いが招く「過剰サービス」の構造的問題】
わが国の介護保険制度は、需要増に対し財源と人材が圧倒的に不足する深刻な危機にある。
最大の問題は、利用者・事業者・ケアマネジャーの全員が「サービス量を増やす」動機を持つ「出来高払い」方式にある。
特に事業者がケアマネジャーを抱え込む「垂直統合(囲い込み)」により、利益誘導や不必要な介護が提供されやすい構造となっている。
【提言:ケアマネジャーの役割再定義と独立性の確保】
この流れを断ち切るため、ケアマネジャーを「介護費用」と「成果(アウトカム)」の両方を管理する「司令塔」として再定義すべきである。
・ケアマネジメントの独立: 事業者との資本的な結びつきを断ち、中立・公正なプラン作成を徹底する。
・成果に基づく評価の導入: 状態の重度化防止や、効率的な資源利用などの指標に基づき、ケアマネジャーを評価・報酬化する。
・処遇の抜本的改善: 司令塔としての重責に見合う給与体系へと引き上げ、担い手を確保する。
【結論】
2027年度の制度改正では、単なる自己負担増(2割対象拡大)などの「切れ味の悪い政策」に頼るのではなく、ケアマネジャーに権限と責任を付与し、資源を有効活用する仕組みへの転換が必要である。

飯塚教授論述から|ケアマネジャーの独立性付与に伴う責任と権限の付与案を考える
飯塚教授の論述は、医療経済学の視点からとされています。
冒頭の記述にあるのが、
・介護サービスの需要が大幅に増加する一方で支える財源や人材が不足し、今後はさらに深刻化
・地域によって状況にばらつきがあり、全国一律の制度を維持するのは困難
そして、以下の3点に絞って考察
1.地域の実情に応じたサービス提供体制の構築
2.保険財政の改善に向けて、自己負担2割の対象範囲の拡大
3.住宅型有料老人ホームなどでの「囲い込み」問題への対応
しかし、これらを含む、どの意見からも、介護保険制度の構造問題の解決につながる道筋は明らかではないとしています。
ただ、こうした認識から、同氏の提案の目玉は、「ケアマネジャーの独立性」。
「ケアマネジャーを介護保険サービスの司令塔と位置づけ、責任と権限を付与」するとあります。
ケアマネジャーを、介護費用と介護の成果(アウトカム)の両方を管理する司令塔として位置付ける。
それにより、限りある介護資源を有効活用し、必要性の低い介護を減らす効果があるとするのです。
果たして、それで、垂直的・水平的に、あるべき介護保険制度の管理運用ができるでしょうか?
責任を持ってもらうためには、まさに「権限」が不可欠。
どういう「ケアマネジャー資格制度」にするのかは、本論では明確に示されていません。
もう一つ、
・果たしてその業務に必要な施設や利用者に関する十分な情報を入手できるか、という問題があります。
そして、筆者がいう
・成果の評価システム、効果検証が最も困難な課題と考えます。
その評価基準が、果たして客観的かつ公平性をもったものにできるか、それは誰が作成するのか。
言い換えれば、こうした権限と責任と職務遂行能力と適性をもつ専門職を上回る知見と能力をもつ人物もしくは組織が、評価者・監査人として存在するかということが問題にもなるのです。
この提案を読んで真っ先に思ったのは、筆者は、介護の現場をあまり知らないのではないか、ということ。
敢えて、権限と責任を持つ独立したエキスパートとするには、「公務員」という立場に置くしかないのではないだろうか、と。
それでも、その業務を担うのは、非常に難しいと考えます。
税理士や公認会計士などの士族における、規程化された関連法規の遵守が職務基準というのとは、まったく違うのです。
介護の生の現場の実情が、施設・専門職そして利用者と多岐にわたり、個々の事情・実情がすべて異なるのです。
確かにケアマネを介しての事業利益の「垂直統合」「囲い込み」は、大問題です。
しかし、本来そのリスクは、制度開始時から分かっていたこと。
それを同氏の提案のように改革することは、それだけにとどまらず、介護保険制度全体の改革と一体のものである必要があります。
ここでは、この指摘でとどめておきましょう。

上記の意見書の画像が、この飯塚教授の論考と関わっていることが、分かるかと思います。
2.公費負担6割に引き上げを:結城康博淑徳大学教授、論述から
*ゆうき・やすひろ氏:1969年生まれ。法政大博士(政治学)。専門・社会保障論、社会福祉学
結城教授論述の要点
【現状:賃金低迷による「サービスなき保険」の危機】
介護職員の給与は全産業平均より月額約8万円も低く、人材不足から訪問介護の倒産が相次いでいる。
すでに一部地域では保険料を払ってもサービスが受けられない「掛け捨て」状態が現実化している。
ICTやロボット、外国人材に期待を寄せる声もあるが、対人サービスの現場を代替するには至っていない。
【提言:財源の抜本的拡充と「公務員ヘルパー」の創設】
小手先の改革ではなく、制度を維持するためには年間1.5兆~2兆円規模の新たな財源投入が不可欠である。
・公費負担を6割へ: 現行の5割(国・自治体)から6割へ引き上げ、現役世代の保険料増を抑制する。
財源は法人税や高齢者層への資産課税(相続税等)で賄う。
・公務員ヘルパーの導入: 民間が撤退する過疎地などで、自治体が終身雇用の「公務員」としてヘルパーを採用する。
これにより若者の地元定着と安定したサービス供給を両立させる。
・ビジネスケアラー対策: 介護を「福祉」だけでなく、介護離職を防ぐ「経済・雇用政策」として捉え直す。
【結論】
「混合介護」などの市場原理では中間層を救えない。
企業も受益者として負担し、国家戦略として介護システムを再構築すべきである。

結城教授論述から|公的財源拡充と公務員ヘルパー制を考える
結城氏は、私が最も信頼している介護専門学者。
自身がケアマネジャー経験を持ち、介護保険制度の導入期から介護制度と介護専門職問題に関し、極めて公平・公正な提案・提言を続けている研究者です。
著書も多く、岩波新書の3部作
・『介護 現場からの検証』(2008/5/20刊)
・『在宅介護 ー「自分で選ぶ」視点から』(2015/8/20刊)
・『介護格差』(2024/8/20刊)
はお薦めです。
結城氏の財源拡充提案は、税と社会保障の一体改革派=財政規律主義者から見れば、言語道断・荒唐無稽でしょう。
まあこのレベル・性質のものは、絶対にかみ合わない議論。
良いとか悪いとかのジャッジそのものがあまり意味・意義を持ちえません。
私と当サイトの考えは、総括部分で述べます。
公務員ヘルパー構想は、私の根本的な考えは、総括でも述べていますが、本来介護事業は公的なもの。
その為、それに従事する人も、福祉行政職で、公務員と考えうるのです。
その考え方と通じるもので、同氏の案は、非常に明確で、正規公務員としての介護職雇用と活用です。
充分理解できます。
しかし、その
また低賃金の是正のために公費が事業者に支援金・補助金として給付される状態が続いています。
介護専門職に対する公的支援・給付は、准公務員に対する人件費と明確にする。
支給された給付金は、賃金・給与の一部として、給与明細書上「公務手当」など、すべての事業者が補助科目を同一名称として処理計上する。
その賃金データは、厚生労働省に提出する義務がある。
ここまで規定化しないと、給付金が、正しく、専門職の賃金・給与に充てられたかどうかが不明のままになるリスクが大きいですね。
投入する公費の増額と財源として、法人税増税と富裕高齢者層への課税増も、典型的な提案として、十分理解できるものです。
しかし、それがすんなりと通るものではないことも自明。
私とと当サイトとしては、むしろ他の論者も触れていない、ビジネスケアラー問題、介護離職防止策についての踏み込んだ提案をみたかったですね。
本稿最後に、別サイトで展開した介護離職を防ぐための問題提起シリーズ記事を紹介していますし。
最後に、同氏は、
「人口減少・円安・物価高・財政赤字が進み、介護保険制度発足時と比べて社会情勢は様変わり。
介護を単なる要介護者や認知症高齢者のための福祉インフラとしてだけではなく、経済・雇用政策や地域活性化策としての側面も加味し、従来の枠組みにとらわれず、新しい介護システムの構築を。」
とまとめています。
一般論として、至極まっとうな提起ですが、だからこそ、同氏に改革と呼ぶにふさわしいあり方を今後、是非期待したいと考えています。

3.給付・負担の見直しを粛々と:高野龍昭東洋大学教授、論述から
*たかの・たつあき氏: 1964年生まれ。龍谷大文卒。社会福祉士・介護支援専門員。専門は介護福祉学
高野教授論述の要点
【現状:進まぬ改革と「先送り」される持続可能性】
2025年12月の意見書では、2割負担の対象拡大やケアプラン有料化、軽度者の地域移行など、主要な論点がことごとく「先送り」となった。このままでは現役世代の負担は増すばかりであり、制度に対する信頼が失われかねない。
【提言:痛みを伴う改革の完遂と負担増の受容】
介護保険の持続可能性を確保するためには、以下の施策を「粛々と」進めるほかない。
・能力に応じた負担の徹底: 2割負担の所得基準引き下げやケアプランの自己負担導入は、財政効果こそ限定的(全体の0.7%程度)だが、「現役世代との公平性」を示す強いメッセージとなる。
・地域包括ケアの深化: 軽度者向けサービスを市町村の事業へ移行し、非専門人材も活用することで、地域全体で支える仕組みを強化する。
・「公費6割」への批判: 公費負担の引き上げは社会保険の根幹を揺るがす「荒唐無稽」な議論であり、現実的ではない。
【結論】 「経済毒性(負担増によるQOL低下)」に配慮しつつも、給付水準を維持するためには、国民が「負担増はやむを得ない」という現実に立ち返り、保険料と税の両面で負担を拡大する議論を避けては通れない。
高野教授論述から考える
審議会で最も激しい応酬となったのは、給付と負担をめぐる以下の3点、と高野教授。
1.一定以上の所得があり、サービス利用料の2割を負担する対象範囲の拡大
2.ケアマネジャーによるケアプラン作成への利用者負担の導入
3.要介護1~2軽度者生活援助サービス(掃除や調理、通所介護等)保険給付の、市町村主体の地域支援事業への移行
部会の議論内容のリークですね。
ただそうしたある意味、議論ばかりの状況に対して、厳しく、かなり過激な発言を投げかけています。
最近の政治・政策状況において、手取りを増やす策として、社会保険料の削減・抑制が挙げられることが多いですね。
その傾向について、以下の指摘があります。
「社会保険料を抑制すべきだとする世論と政策に懸念を示し、介護保険料もその一つ。しかし保険料の抑制は保険給付自体を抑制することを意味。そのためによる、給付縮小によるサービス提供基盤は縮小。その再拡大には10年単位の長期の期間が必要に。現役世代や企業の負担軽減のためのその抑制は、その世代が高齢期に達したときの介護・医療を脆弱化。加えて、生産年齢人口減少下で就業者の介護離職のリスクを一層高める。」
見方によれば、現役世代思いのまっとうな意見とも思えます。
しかし、そこまで心配する必要はないと思いますし、うがった見方をすれば、財源を失うリスクを回避するための便法・詭弁のような気もしないでもないです。
単純化すれば、税と社会保障の一体改革、財政規律主義を体現する研究者と言えるでしょう。
政府にとっては、最も好ましい専門家、有識者という評価になるでしょう。
「介護保険制度は社会保険でありながら、すでに財源の50%を公費が占める。これを超える公費負担は、この制度が社会保険ではなくなり根幹から再編されることを意味する。必要な財源も存在しない。」
「財源確保に関し、審議会の議論で、介護保険における公費(税)財源の比率を高めるべきとの意見。これは荒唐無稽な考え。」
財務省が喜ぶ、岩盤の代表的主張なので、議論の余地がないのです。
日経が最も好み、一致する意見でもあります。
高野氏も、結城氏と同じく、介護福祉学が専門で、社会福祉士と介護支援専門員(ケアマネ)資格を持っています。
しかし、結城氏とは真逆の主張。
どうなっているんでしょうね?
結局のところ、繰り返しますが、介護保険制度の苦境に対しては所与の改革を粛々と進めることを前提に、
・社会保険料と税の国民負担を拡大する方策を検討するほかなく
・高齢者世代に対する再分配のあり方を再考することが不可欠」というわけです。
無論、一律的なそうした意見には、私及び当サイトは、反対の立場です。

介護保険制度の見直しに関する意見(案)(概要)社会保障審議会・介護保険部会(2025年12月25日)
ここまで、3つに分けて介護部会用資料を挿入してきました。
議論の概要を感覚的にでも知っておくために、その構成を整理しました。
後から、同じ内容の画像も添付しました。そちらの方が見やすいと思ったので。
Ⅰ 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
1.地域の類型を踏まえたサービス提供体制・支援体制
2.中山間・人口減少地域における柔軟な対応等
3.大都市部・一般市等における対応
Ⅱ 地域包括ケアシステムの深化
1.地域包括ケアシステムの深化に向けて
2.医療・介護連携の推進
3.有料老人ホームの事業運営の透明性確保、高齢者への住まい支援
4.介護予防の推進、総合事業の在り方
5.相談支援等の在り方
6.認知症施策の推進等
Ⅲ 介護人材確保と職場環境改善に向けた生産性向上、経営改善支援
1.総合的な介護人材確保対策
2.介護現場の職場環境改善に向けた生産性向上、経営改善支援、協働化等の推進
Ⅳ 多様なニーズに対応した介護基盤の整備、制度の持続可能性の確保
1.2040年を見据えた介護保険事業(支援)計画の在り方
2.給付と負担
3.その他の課題
部会での議論を進める上での資料として準備されたものですね。(案)としてあります。
実際に行われた議論の議事録が公開されていれば非常に興味深く読めたでしょうね。
3人の論者はいずれも部会メンバーではありません。
ただ、議論の一部について情報は得ていると思わせる内容が入っていたことは、確認できました。
ただ、資料そのものからは、決して「苦境の介護保険制度」と感じさせる状況であることは伝わってきません。
日経が、財政規律主義を一貫して基調としてきており、こうした表現でテーマ化したものと推察しています。
この部会での事前配布資料は公開されていたので、以下に転記しました。
興味関心をお持ちになりましたら、ご覧になってください。
<資料及び参考資料>
・参考資料 介護保険制度の見直しに関する意見(案)(参考資料)[PDF形式:26.3MB]
・資料1 介護保険制度の見直しに関する意見(案)[PDF形式:1.4MB]
・資料2 介護保険制度の見直しに関する意見(案)(概要)[PDF形式:1.2MB]

3者の論述を俯瞰・総括する
介護保険制度の苦境を示すデータ
それでは次に、3人の論述の中から、介護保険制度が苦境にあることを示す数値情報を取り出し、確認しておきましょう。
・高齢化に伴い、介護保険サービス利用者は、制度創設時の00年比で3.6倍と大幅増加
・介護費用総額は、25年14.3兆円(00年3.6兆円の4倍)。40年度27.6兆円、国内総生産(GDP)比3.5%の見通し
・生産年齢人口が00年から25年までに17%減少。⇒ 高齢者1人を支える現役世代は3.9人から1.9人へ減少
・現役世代の月額保険料は00年度の平均2075円が、25年度6200円に上昇
・介護保険の利用者の自己負担はほとんどが1割負担。2割以上負担は8.2%
・サービス利用料2割負担対象者約5%(35万人)拡大(年収280万円以上を240万円以上に引き下げ)で年間200億円以上介護給付費削減
・3年ごとに見直される65歳以上の介護保険料の全国平均基準額は上昇し40年度9200円(予測)
・訪問介護の有効求人倍率は14.14倍(23年度)と厳しい人手不足
・2025年の訪問介護事業所倒産件数91件、3年連続で過去最多を更新
・居宅介護サービス全利用者にケアプラン作成費用定率負担導入時、財政効果年額約600億円(試算)
苦境と認識すべき4つの課題
上記のデータが一般的な情報です。
これに3者の論述も加えて、敢えて、介護保険制度の苦境としっかり受け止めるべき課題を4点挙げました。
1)保険財源問題(過剰給付・過剰サービス問題を含む)
2)介護士人材不足
3)地方自治体の介護行政の苦難
4)介護事業者の経営難
ただ、日経の問題意識は、唯一「財源問題」にあると思われます。
従い、3人の主要な論点は、少しずつ異なりますが、軸となっているのは、やはり「財源問題」でしたね。

介護保険制度の根本的な問題4つの視点と根本的な改善・改革の可能性
だた、介護保険制度が抱える問題は、財源問題が主因ではなく、本質的には、制度が開始した時点から内包していたものと考えます。
そこで、この問題を整理すると、以下の4つの視点から俯瞰するのが良いと思います。
1.制度内容自体の問題(行政・立法問題、財源問題)
2.事業者の問題
3.介護専門職の問題
4.利用者の問題
ただ、当然それそれが独立した要因・変数ではなく、関連しているものです。
本稿で、この4つの視点について考察することは避けますが、いずれこれらをシリーズ化して、考察してみたいと考えています。
1.は、本稿が直接関連しているテーマと言えますね。
2.は、介護事業者の倒産問題と業界の動向、位置付け
3.は、介護職人材不足問題とその賃金問題・働き方問題
4.は、むしろ当サイトが介護問題でもっとも主張したい、希望する介護についての本人・家族など当事者意識問題
これらが重点になると思います。
総括|「苦境の介護保険制度」どうする?
3者3様の論述で、これでは、問題の抜本的解決が先送りされるのは当然。
そんな感じが、先ず最初に。
特に、結城氏の公費6割案に対して、翌日の記事で、高野氏が、論外と断定。
部会の論争の紙上版といえる内容になりました。
飯塚氏提案の「ケアマネの独立制」などは、先述したように、こちらの方が荒唐無稽というべきものでしょう。
介護制度は社会保障制度の一環|本質的には公的事業
保険制度を含む「介護制度」は、社会保障制度の課題の一つです。
従って、その事業は、公的事業と位置付けることが適切と考えています。
民営化・民業化は、利潤獲得の原理が第一となり、介護制度の本質・根源から逸脱することは目に見えていたはずです。
従い、その抑止策は、介護事業の公営化のみ。
そう言えるのではないでしょうか。
ただ、介護サービス諸費用が「公定価格」化したことは、その目的のための方策であった。
そう言えますが、それは、メリット・デメリット両面があったわけです。
詳しいことは、別の機会にと思います。
介護保険制度は、介護制度にモデルチェンジも一考
これは、どういうことかというと、例を挙げれば、国民年金制度は、元々は「国民年金保険制度」だったもの。
それが、公費・国費の負担率が高くなり、保険制度が形骸化したため、「保険」が削除されて「国民年金」となったのです。
従い、5割を超えれば、保険制度でなく、「介護制度」と包括的に表現し、公費の大幅な活用も一理あるのです。
もちろん、財源が一層問題にはなりますが。
介護専門職の低賃金は、現行制度では改善の余地なし|賃金補填は、准公務手当に当たる
介護という仕事に、生産性を求めることには、自ずと限界がある。
人対人のサービスは、ごく一部がフィジカルロボットに代用できても、緊急時はもちろん、要介護者の状況に応じた介護・介助、諸対応がタイムリーに、的確に行うことは難しい。
そうしたサポートに対して、利用者に高いコスト負担を強いるのは、一部の富裕層を除けばムリなことも明らかです。
公定価格の大幅引き上げは、介護制度自体の終わりの始まりになるでしょう。
事業者は生き延びても、利用者が激減するだろうから。
そうなると、公的負担の一層の増加が求められ、堂々巡りになります。
なお、介護専門職への准公務員とみなしての賃金補填については、結城教授の論述の項で述べました。
確認頂ければと思います。
苦境乗り切り策は、介護制度の抜本的改革しかない
苦境は、財源問題だけではありません。
私の昨年2025年1年間の介護保険料負担額は104,260円、妻は81,320円、合計185,580円でした。
今年2月の保険料は、それぞれ、11900円、9,100円(それぞれ2か月分)、合計21,000円。1ヶ月2人で、10,500円です。
完全年金生活者にとっては、間違いなく「苦境」状態です。
そしてそれは今に始まったことでなく、これからもますます負担が増え、苦境は募ります。
マクロスライド制とやらの厚生年金など、この数年の物価上昇には、現役世代の「手取りを増やす」政策と違って、無力・無援状態です。
ただ耐えるしかないのが現実です!
従い、結城氏が言うように、抜本的な改革のみが苦境脱却の方法。
しかし、今のところ、だれにもその方策は見えていません。
その前に、苦境というほどのものでもない。
そんな感覚が蔓延・沈潜?している気がしているのも現実と言えるでしょうか。
なぜか、大手メディアだけがそこにこだわっている気がしてなりません。
現役世代の不安・不満解消策は他にあるはずですから。
超高齢化社会を脱する25年後には、まったく違った景色が!
しかし、先送りも、あながち間違いではない、とも言えます。
その理由は、現在の後期高齢者世代は、2050年までにはほとんどこの世に存在しないですから。
私たちも。
介護需要も縮減し、介護施設の状況も過剰になっている可能性が高いです。
現状の介護事業者大手の介護事業のシステム化(AI化)も進み、多様な事業ポートフォリオの展開により、高収益・高労働生産性・高賃金事業に一層進化している可能性が高い。
現在がそうであるように、今後も零細事業者は退出を余儀なくされていくでしょう。
良い部分もあれば、負の部分もあります。
すべてが良いというのは、なかなか難しいです。
シン・ベーシックインカム2050が、抜本的改革の起点となり、望ましい帰結に導く
従来型のベーシックインカムの実現をめざしても、その提案者・推進者には、関連するすべての社会経済システム改革の発想も、その提言も頭にはありません。
そのため、介護制度・介護保険制度の諸問題の改善・解決に眼を向けることもないでしょう。
しかし、当サイトがめざす、望ましい日本社会、シン日本社会2050を形成する理念体系群で最も重要な「シンBI2050」は、それを可能にする構想と具体策を持ちます。
まだそれらは完成形に至らず、これからの取り組みにかかっていますが。
その可能性の一端を、介護制度と結びつけて、お伝えしておきましょう。
まず、シンBI2050の国民への無条件での支給で、介護専門職の基本的な生活(費用)が保証されます。
現状の低賃金が、それで補填されることになり、生活不安が解消されます。
その後は、優良企業への就職選択志向が強まり、弱い事業基盤の零細事業者が淘汰されます。
もちろん、要介護者にもシンBI2050が無条件で支給され、介護にかかる費用の相当部分を賄うことが可能になります。
まあ、こうした制度と財源問題がどうこう、と同じような議論を繰り返し行い、都度先送りしていても、介護離職問題や事業者の倒産件数の増加は、小論論者ではないですが、粛々と進んでいきます。
ほとんどすべての人にある、介護生活。苦境か、安心・安定か
義母の介護を経験した私たち夫婦も、後期高齢者となり、現実生活において、日常生活上での介助が必要になっています。
先日妻が「要支援2」の認定結果を受けましたが、いわゆる「老老介護」「在宅介護」のごくごく初歩的・初期的状況に入っています。
そのため、今後の一段の変化も予想・想定して、介護生活という「介活」と、本格的?な介護への準備活動としての「介活」を並行して進めていく状況にあります。
できることならば、苦境・苦難に陥らないよう。
安心・安定を感じうる介護制度・介護システム社会の一員として。
一層介護と介護制度についての考察を進めていく状況にもあり、当サイトで、取り組んでいきます。
介護保険とここまでの当サイトの論考でも、介護保険制度の苦境からの脱出は不可能です。
そして抜本的な介護保険制度改革の道と姿を提示することも、結局先送りに。
介護保険制度は、シン・ベーシックインカム2050が寄与し、関与する領域の一つですが、他の一つ一つの関連課題と具体的な改革策を、丁寧に繋げていくプロセスに従って、その取り組みを進めていくことにします。
特に、上記の4つの視点での考察を、重視していきます。

「介護離職を防ぐための8ステップ+8」シリーズ記事リスト
なお、介護離職問題を取り上げたシリーズ記事も公開しています。
関心をお持ち頂けましたら、チェックしてみてください。
⇒ 介護離職は本当に防げるのか|「8ステップ+1」シリーズ序論として考える現実と限界 – Life Stage Navi
⇒ 第1章 介護離職とは何かを構造的に理解する|ステップ1 – Life Stage Navi
⇒ 第2章 介護保険と介護支援制度を実務で使える状態にする|ステップ2 – Life Stage Navi
⇒ 第3章 介護の場所・人・お金を整理し選択する判断軸|ステップ3 – Life Stage Navi
⇒ 第4章 自治体と地域の介護支援制度を使いこなす実践法|ステップ4 – Life Stage Navi
⇒ 第5章 仕事と介護を両立する制度と手続きを全体整理|ステップ5 – Life Stage Navi
⇒ 第6章 仕事と介護を両立するための現実的な解決策|ステップ6 – Life Stage Navi
⇒ 第7章 家族で介護を支える体制と役割分担の設計法|ステップ7 – Life Stage Navi
⇒ 第8章 介護離職を防ぐために行う事前準備の全体設計|ステップ8 – Life Stage Navi
⇒ 第9章 万一の介護離職後に備える再就職・転職とキャリア再構築(ステップ+1) – Life Stage Navi
⇒ 【シリーズ総括】介護離職ゼロは可能か? ― 介護と仕事を両立するための本質と思考 – Life Stage Navi