「持続可能な社会保障」とは何か|インデクセーションが示す制度延命の現実
はじめに
日経の経済教室ページで定例化されている小論シリーズ【やさしい経済学】。
興味関心を持ったテーマについて、フォローしています。
今回は、2025年11月24日から同12月4日までの9回シリーズの、木村真兵庫県立大教授による「持続可能な社会保障」というテーマを取り上げます。
当記事のURLは、記事末に添付しました。(但し、有料会員だけがアクセスできます。ご了承ください。)
「持続可能な社会保障」小論が示す「延命可能な社会保障」|「やさしい経済学」から学ぶシリーズー1
税と社会保障の一体改革とその背景
いわゆる「税と社会保障の一体改革」という基本方針で語られる社会保障問題。
その本質は、超高齢化・少子化などを背景として
1)医療や介護分野での費用負担が、増加し続けていること。
2)その増加に対応することが、保険料収入では賄うことが不可能であること。
3)またその対応として、税金からの補填が増え続け、国の財政上、問題視されていること。
4)その対策・対応として、社会保険料の引き上げが続き、特に現役世代の負担増が、不公平感を増大させていること。
5)また、受益者負担を増やすことも必須として、法改正が継続的に検討され、あるいは実際に行われていること。
などで示されます。
6)それ以外に、税負担の増加を吸収する方法として、いわゆる「所得の再分配」を基本として、富裕層の税負担を引き上げるという議論も、繰り返し課題とされていること。
こうした課題の改善・解決を図るべきとして、常に俎上に乗っているのが「税と社会保障の一体改革」というわけです。
すなわち、コストが右肩上がりで増え続ける社会保障費用は、税負担増で対応するべきではなく、税金は本来の目的の使途に適切に使われるべき。
聞けば、なるほどと思われる問いであり、解決方法であるかのようですが、果たしてそれが唯一の方法・政策なのか。
この一体改革は、社会保障制度を持続可能にする手段・方法の鍵となるものであることは明らかです。
今回の「やさしい経済学」では、そのための「やさしい改善・解決」法が提示されているでしょうか。
まず、9回のシリーズの内容を、ChatGPTに依頼して、掲載順に要約してみました。

「持続可能な社会保障」小論シリーズ要約|ChatGPT
1.給付拡大の成果と「不安の源」へ転じた社会保障
日本の社会保障は、皆保険・皆年金の整備を通じて寿命延伸と生活安定に大きく貢献してきた。
一方で給付規模は国民所得比で6%未満(1970年)から30%超へ拡大し、負担も国民負担率46%に達した。
少子高齢化の進行により、給付低下と負担増への不安が高まり、社会保障が本来の「安心装置」から「不安要因」に転じている。
こうした状況で重要なのが、抜本改革以前に制度を安定化させるインデクセーションという視点である。
2.人口構造が決める負担上昇の不可避性
社会保障を左右する最大要因は人口動態、とりわけ年齢構成である。
将来人口推計の精度は高く、第2次ベビーブーム世代の高齢化によって、従属人口指数は今後急上昇することがほぼ確実だ。
出生率の回復は長期的には負担抑制に寄与するが、目前の急激な負担増には間に合わない。
したがって、少子化対策とは別に、短中期的な制度調整策が不可欠である。
3.インデクセーションとは何か
インデクセーションとは、物価や賃金などの指標に連動させ、制度の「実質価値」を維持する調整方法。
税制のブラケットクリープは、インデクセーション不在がもたらす典型的問題だ。
海外では税や社会保険で自動調整が制度化されているが、日本では名目基準が多く、政治的な争点化を招きやすい。
自動的・中立的な調整を導入することで、改革議論を本質に集中させられる。
4.年金制度の方式と歴史的選択
年金制度は「給付建て/拠出建て」と「積立方式/賦課方式」の組み合わせで整理できる。
日本は当初、給付建て積立方式だったが、戦後インフレで積立金の実質価値が急減し、段階的に賦課方式へ移行した。
2004年改革で保険料固定・給付調整型(拠出建て賦課方式)が確立され、将来不安の大きかった保険料上昇を抑制する制度設計が選択された。
5.年金制度におけるインデクセーションの完成形
賦課方式でも、人口構成が安定していれば賃金連動で給付水準を維持できる。
日本の年金は、賃金スライド・物価スライド・マクロ経済スライドという複数の調整機構を組み合わせている。
さらに積立金の運用収益を緩衝材として活用し、完全賦課方式よりも負担を抑えている。
制度設計としては国際的に見ても精緻である。
6.制度設計と運用のズレが生んだ問題
2004年改革後、インデクセーションが十分に機能しなかった結果、2つの問題が生じた。
① デフレ期にマクロ経済スライドが発動されず、調整が遅れたこと。
② 基礎年金が賃金連動されず、結果的に給付削減が長期化したこと。
これにより、特に就職氷河期世代の基礎年金低下リスクが高まっている。インデクセーションの不徹底は、後年に大きな歪みを生む。
7.医療・介護という「官製市場」の難しさ
医療・介護は単年度収支均衡の賦課方式だが、現物給付かつ官製市場であるため、年金のような単純なインデクセーションが困難である。
診療報酬は賃金上昇と必ずしも連動せず、抑制が続けば人手不足を招く。高齢化に応じた一律削減も現実的でなく、年金以上に調整が難しい分野である。
8.高額療養費制度と「裁量的改正」の問題
高額療養費制度は、長期間インデクセーションされなかったため、実効給付率が上昇し続けた。
限度額引き上げはインデクセーションの発想に沿うが、10年に一度の裁量的見直しは「後付けの負担増」と受け取られやすい。
自動・小刻みな調整を事前合意しておくことが制度への信頼を高める。
9.インデクセーションの限界と次の段階
高齢化が続く以上、賃金連動だけでは制度維持は不十分である。
支給開始年齢の引き上げや給付対象の再定義といった、給付範囲の見直しが必要となる。
その際も、平均寿命に連動した年齢調整など、インデクセーションの考え方が有効である。重要なのは、時間をかけた周知と予見可能性の確保だ。
引き続き、以上の要約を受けて、ChatGPTに総括をしてもらいました。

「持続可能な社会保障」小論シリーズ総括|with ChatGPT
本連載の核心
本連載の最大の特徴は、
「社会保障問題=給付削減か負担増か」という二項対立から離れ、
制度を“実質的に維持する技術”としてインデクセーションを再評価した点にある。
・少子高齢化は既に「予測」ではなく「確定した前提」
・抜本改革は不可避だが、いきなり踏み込めば政治的・社会的コストが大きい
・その前段階として、名目基準の放置による歪みを除去することが合理的
という、極めて現実的な政策整理が一貫している。
「持続可能な社会保障」小論シリーズをChatGPTが評価する
以上の要約と総括を行ったChatGPTが、この小論をどう評価するか。
訊ねての回答が、以下です。
分析的評価
① 学術的評価
・財政学・社会保障論の基本枠組み(賦課方式・積立方式、実質価値、人口構成)を用いながら、一般読者向けに高度な議論を成立させている
・「制度設計」と「制度運用」の違いを明確に分けた点は、学術的にも優れている
② 政策論としての評価
・急進的改革論(年金大幅削減・完全積立化)への冷静なカウンター
・政治争点化を避けつつ持続性を高める「現実解」を提示
・特に年金2004年改革の再評価は、近年の議論では貴重
③ 限界・補足的論点
・インデクセーションは「延命措置」であり、分配構造そのものの再設計(最低保障・再分配強化)までは踏み込まない
・就労構造の変化(非正規・女性・高齢就労)との接続はやや薄い
・ベーシックインカムや最低所得保障との比較検討は行われていない
総合評価
★★★★☆(4.5 / 5)
社会保障を「感情論・世代対立」から切り離し、
制度工学として冷静に考えるための優れた導入書であり、
政策関係者・研究者だけでなく、制度利用者側にも必読の連載といえる。
「インデクセーション」という用語の使用と浸透がもたらすものは?
ブラケットクリープ(bracket creep)とは
ChatGPTの要約の3.の中で、「税制のブラケットクリープ」という表現がありました。
そこで、ChatGPTにその意味を尋ねて返ってきた回答が以下。
**ブラケットクリープ(bracket creep)**とは、
👉 物価上昇などで名目所得が増えただけなのに、実質的には豊かになっていないのに、税負担が重くなってしまう現象です。
もう少しだけ噛み砕くと
・所得税は 累進課税(所得が増えるほど税率が上がる)
・物価が上がると、給料は「見かけ上」増えることがある
・しかし 税率区分(ブラケット)が物価に連動していないと、
・実質所得は同じなのに
・より高い税率が適用されてしまう
具体例を示すと、
・物価が10%上昇
・給与も10%上がり、生活水準は変わらない
・しかし課税所得が税率の境目を超える
→ 税率が上がり、手取りは実質的に減る
問題点の本質を詰めていくと、
・増税が国会審議なしに、事実上起きる
・本人の「所得能力向上」と無関係に負担が増える
・税の公平性・透明性を損なう
その対策として、
・税率区分や控除額を 物価(CPI)に自動連動させる
→ これが インデクセーション(米国では1980年代から導入)
一言でまとめると
「インフレによる名目賃金上昇を利用した、気づきにくい増税」
これが税制のブラケットクリープであり、
その対策として用いられるのが「インデクセーション」というわけですね。
当サイトで、一つだけここで問題を挙げておくと、
物価(CPI)に自動連動させるとはいっても、今消費するその場・その時に自動連動するわけではなく、タイムラグが生じることです。
実感として、その「インデクセーション」を体験することができないという問題があるのです。
インデクセーションという学術語が常用語化することの意味
マクロスライドという、物価に連動して年金給付額が増減するというシステム。
用語は一応頻出・頻繁に用いられてはいても、実際の物価高の程度とスピードを考えると、とてもその恩恵・メリットを享受できているとは感じられないのが実情です。
手取りを増やすというスローガンが受けて勢力を伸長した政党があるけれど、実際には、CPIの勢いとそれによるブラケットクリープの効き方がまさっている。
すべての職種・事業規模に賃上げが浸透するわけではないことも相まって、インデクセーションも、そういう用語を好む人たちの自己満足度を高める程度のこと。そう思います。

小論シリーズに対する当サイトの基本認識|延命可能な社会保障論からの脱却へ
学術的には評価が高いが、政策的には現実解?
いみじくも、ChatGPTは、学術的には高い評価を付けたけれど、政策面では、現実解を選んだと。
最大の評価と読める
「社会保障を「感情論・世代対立」から切り離し、制度工学として冷静に考えるための優れた導入書」と。
「感情論・世代対立」は避けた結果が、制度工学としての冷静に考えること。
導入書としては優れていても、導入制度としては、恐らく、適切には機能しないだろう。
延命措置に過ぎないインデクセーションは、真の解か?
まさに、ChatGPTが言うように、「延命措置論」を最終的に提示した「持続可能な社会保障」論。
正しくは、「延命可能な社会保障」というテーマに置き換えるべきだった。
・急進的改革論(年金大幅削減・完全積立化)への冷静なカウンター
であっても、決してそのパンチは効かず、議論から逃げるだけ。
・分配構造そのものの再設計(最低保障・再分配強化)までは踏み込まなければ、
学者の無責任な、研究領域だけの報告に過ぎない。
そして、真の解の探究には、避けるべきではない
・ベーシックインカムや最低所得保障との比較検討は行わない
ことも、学者・研究者の共通因子、共通分子という帰結に。
そしてこうした論述を取り上げるマスコミも、同様のもの。
こうした、時間とコストの浪費が、延々と続く、豊かで、平穏な日本社会。
と言えば聞こえがいいが・・・。
当サイトがめざす、シン日本社会2050の基本理念群と社会保障制度
果たして、こうした社会に、一石を投じることができるか。
先行して公開した以下の「シン日本社会2050」の各基本理念ラインアップ。
・シン安保2050
・シン社会的共通資本2050
・シン循環型社会2050
・シンMMT2050
・シン・イノベーション2050
その集約・統合制度・システム化を理念とする
・シン・ベーシックインカム2050
その集合体及び概念としての
・シン日本社会2050
その波及帰結・目標としての
・シン・グローバル社会2050
これらに直接・間接に関係するテーマの一つとしての「社会保障及び社会保障制度」問題。
本稿では触れませんが、究極的には、シンBI2050の構想と制度・システムを確立することで、望ましい解・あるべき解を見出すことになると考えています。
当サイト運営の目的を実践・実現する道が、2026年から始まっています。
(参考記事)
⇒ 「シン日本社会2050」の中核となる「シン・ベーシックインカム2050」の構築へ – ONOLOGUE2050

日経【やさしい経済学】「持続可能な社会保障」小論シリーズ・リスト
・(やさしい経済学)持続可能な社会保障(1) 給付の低下と負担の上昇 兵庫県立大学教授 木村真 – 日本経済新聞 2025/11/24
・(やさしい経済学)持続可能な社会保障(2) 急ピッチな負担上昇に備える 兵庫県立大学教授 木村真 – 日本経済新聞
・(やさしい経済学)持続可能な社会保障(3) 「インデクセーション」の視点 兵庫県立大学教授 木村真 – 日本経済新聞
・(やさしい経済学)持続可能な社会保障(4) 公的年金の方式は一長一短 兵庫県立大学教授 木村真 – 日本経済新聞
・(やさしい経済学)持続可能な社会保障(5) 年金でのインデクセーション 兵庫県立大学教授 木村真 – 日本経済新聞
・(やさしい経済学)持続可能な社会保障(6) 年金制度改革後の2つの問題 兵庫県立大学教授 木村真 – 日本経済新聞
・(やさしい経済学)持続可能な社会保障(7) 官製市場の医療・介護 兵庫県立大学教授 木村真 – 日本経済新聞
・(やさしい経済学)持続可能な社会保障(8) 高額療養費制度が抱える課題 兵庫県立大学教授 木村真 – 日本経済新聞
・(やさしい経済学)持続可能な社会保障(9) 将来を見越した議論が重要 兵庫県立大学教授 木村真 – 日本経済新聞 2025/12/4
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