MCGHH中国、COP30でも|米不在で、温暖化対策でも主役の座を狙う
はじめに
(参考記事)⇒ 「MAGAの空洞化とMCGHHの台頭──トランプ・習近平会談から読み解く覇権構造の転換」 – ONOLOGUE2050
習近平中国が自由貿易主義を標榜し、トランプ米国が保護主義を強引に進める逆回転が加速するグローバル社会。
当サイトで、11月5日に投稿した冒頭の記事では、これまでの地球の回転に反する状況を、当サイトが仮説化したMCGHH:Make China Great Histritically and Hegemonically というスローガンを用いて確認した。
形骸化・空洞化するトランプのスローガン、MAGA:Make America Great Again を皮肉る意味をもつMCGHH。
そのもう一つの象徴的な例が、直近でも示されている。
「地球温暖化対策」をめぐる動きである。
今回は、MCGHHの仮説的スローガンの現実性を示す例として、以下「温暖化対策」をテーマとして考察してみたい。

1.COP30で示された中国の温暖化対策への意欲とMCGHH
2025年11月6日、地球温暖化対策を議論・検討する「第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)」で開催されている。
アマゾン川の自然環境破壊が問題視されているブラジル北部ベレンでの開催である。
CO2排出量でも競う世界1位中国と2位米国
全世界のCO2排出量とワースト5
地球温暖化対策における覇権争いを語る上で、二酸化炭素(CO2)排出量の現状を抜きにしては語れない。
最新の推計によると、2024年のエネルギー関連CO2排出量は約37.8ギガトンに達し、前年から0.8%増で過去最高を更新。
大気中CO2濃度は422.5ppmに達するなど、危機的状況にある。
この中での排出量のワースト5カ国を以下にまとめた。
| 順位 | 国名 | 年間排出量(百万トン) |
| 1位 | 中国 | 約11,902.5 |
| 2位 | 米国 | 約4,911.4 |
| 3位 | インド | 約3,062.3 |
| 4位 | ロシア | 約1,815.9 |
| 5位 | 日本 | 約988.8 |
このデータからも明らかなように、中国は世界の温室効果ガスの3割超を占める圧倒的な存在である。
その動向が世界の温暖化対策に決定的な影響を与える構造的な背景を示していると言えよう。
同時に、中国は再生可能エネルギーやEV導入においても世界最大規模で進展させているという二面性も持つ。
これが、MCGHHの矛盾性と複雑性、そして現在はあまりにもイージーに利用されている便利用語「多様性」を持つことを物語っている。
柔軟性と言い換えたり、身勝手性と言うのも可能か。
こうなるとやはり、トランプといい勝負だ。
中国と米国のCO2排出量比較とその動向から
「MCGHH」の視点から特に注目すべきは、最新の推計で年間排出量が約119.0億トンに迫る中国の、圧倒的な世界1位という地位。
対するアメリカは約49.1億トンで2位につけており、その差は2.4倍以上に拡大している。
かつての世界最大の排出国であった米国を中国が追い抜き、圧倒的な差をつけたことは、経済規模の逆転と「世界の工場」としての地位を確立したMCGHHの現実も如実に示している。
もう少し内実を詳しく見ると、年間CO2排出量は世界最大規模。
繰り返しになりますが、2024年時点で温室効果ガスは約15.6ギガトンCO2eと推計される一方、2025年にはクリーンエネルギー拡大により四半期・通年ベースでCO2排出が初めて減少に転じたとの分析が複数示されている。
短期的にはピーク到達時期の見立てが後ろ倒しになる可能性も指摘されるが、再エネ・原子力の増強が排出抑制に寄与している現実もある。
この膨大な排出量と並行して取り組む削減策を背景に、後述するが、習近平指導部は「経済と社会の全分野でグリーンへの転換を加速する」と国際舞台で主導権をアピールしている。
これは、温暖化対策という「グローバル・コモンズ」において、トランプ米国の不在に乗じてヘゲモニー(覇権)を確立しようとする明確な、かつ矛盾した戦略と読み解くことができよう。
まさか、トランプ米国は、温暖化対策から逃避し、CO2排出量において、まさにMAGAを実現しようとしているわけではないと思うのだが。(冗談にもなりはしない。)
但し、米国トランプは、CO2排出などお構いなし。
そうなると、単純にMAGAではなくて、深刻なMAGAI(Make America Great Again Ironically)になってしまう。
世界中の信頼の排出リスクを自ら増幅することになるのだが。
習近平中国とトランプ米国の対極的なCOP30対応と温暖化対策
ここでは、前項の内容と一部重複するが、今月のCOP30をめぐるマスコミ報道(特に日経紙)から要約しておきたい。
トランプ米国不在、というより無視のCOP30
習近平中国にCO2排出量では後塵を拝するトランプ米国。
今回のCOP30には、トランプの欠席だけでなく、関係高官も不参加である。
何より、トランプは今年1月の大統領就任日に、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を発表し、大統領令に署名した。
そして、2026年1月に協定から正式に脱退する。
「愚かな人たちが作り上げた史上最大の詐欺」。
これは、先日の9月国連でのトランプの気候変動に関する発言である。
張り切る習近平中国、COP30での突出した動き
一方、CO2排出量トップの習近平中国。
6日の首脳級会合に丁薛祥筆頭副首相が参加。
「中国は約束を守る。経済と社会の全分野でグリーンへの転換を加速する」と主導をアピール。
トランプに対して、習近平はこの9月、「2035年までに温暖化ガス排出量をピーク時から7~10%削減する」と表明している。
そして、トランプ米国を皮肉るように「一部の国が逆行する動きを見せているが、国際社会は正しい方向性を見失うべきでない」と。環境分野での主導権、そして、ヘゲモニー(覇権)をも意識していると受け止めるべきだろう。
(参考)
⇒ COP30、主役狙う中国 首脳級会合が開幕 米不在の温暖化対策 支援金、負担割合争点に – 日本経済新聞 2025/11/7
















